ココナッツちゃん


      〜〜マロンくんの初恋〜〜




京子ちゃんはココナッツ!!
京子ちゃんは浅黒の肌をしていて、黒い瞳に黒い髪、
線の細くて長いまゆをくねらせて、ピクンピクン。
だから、京子ちゃんはココナッツ!!
女の子の友達からは、『ココ』って呼ばれてるんだよ。
でも、マロンくんは恥ずかしくて『ココ』なんて呼べません。だから、時折叫ぶんだ、
「ココ、ココ、ココナッツ!」ってね。だけど、それは海に向かってだったり、心の中で一人
つぶやくようにだったり、なんだけどね。
そんなマロンくんにココナッツちゃんはよく話しかけるんだ、「ねぇ、マロンくん、あのねぇ」ってね。
でも、マロンくんがもじもじしちゃって下を向いてると、「ねぇ、マロンくん、聞いてんのぉー!」
って、怒るんだ。でも、それは本当には怒ってるんじゃあないんだけどね。
このぉー、このぉー、ココナッツ。京子ちゃんは男の子のふりをしているけれど、それは、
素直になれないだけなのかもしれないね。このぉー、このぉー、ココナッツ。
ところで、ココナッツちゃんは、今でこそ、おっぱいも大きいし、それは顔をうずめてしまいたくなるくらいですし、
腕をからませてもらったならば、ココナッツちゃんの中で溶けてしまうことでしょうし、あぁ〜ん、あぁ〜ん。
それに脚だってつるつるしているし、頬ずりしたくなるくらいですし、よだれをたらしながら、ねちねちとなでまわしたい、
ぅ〜ん、そして、ふと桃はピチピチしていて、間にはさんでもらいたい! もし本当にそんなことされたら、
その弾力に酔ひしれて気が変になってしまうことでしょう。腰のくびれだって、そのカーブはその線に沿って
はいずりまわりたいくらいです。あぁ〜ん、あぁ〜ん。思わず触ってしまいたくなる魔性のカーブです。
それから、ココナッツちゃんのボディには跳び込んでしまいたくなるくらいです。思い切って抱きつきたい!
ハァハァ・・・
とにかくココナッツちゃんは全身が女、女、女の色気があふれてるんですが、だから、男の子のようにしていると、
かえって色っぽく感じられます。でも、今でこそ、そうではあっても、ちっちゃな頃は本当に本当に男の子のよう
だったんだよ。そんな姿、形をしていたんだ。男の子の顔をしていた。だから、強がって、わざと男の子のように
振る舞っていたのかもしれないね。
そして、みんながみんな、ココナッツちゃんのことを男の子のように思っていて、男の子を相手にするように
接していたから、それに女の子に対して言えないこともズバズバ言われていたから、ぐさっと胸を突き刺されたように、
それから、大っ嫌いな男の子におっぱいをぐるんぐるんもまれちゃったように、それなのに気持ちよくなっちゃって、
悔しいけど、その気持ちいいが忘れられない!みたいに、とっても傷ついていたのかもしれない、なんて思えるんだ。
ひとり部屋の中で泣いていたんじゃないのかなぁ〜、毎日毎日。きっとそうだったと思うよ。
そんなココナッツちゃんは見た目は男の子のようでも中味は本当に女の子らしい女の子だったんだよ。
それが、いつの頃か、みにくいアヒルの子が突然白鳥になっていくように、どんどんどんどん、
外見も女らしくなっていったんだ。
ちょうどその頃だよ、新学期が始まって、マロンくんとココナッツちゃんが偶然にも同じクラスになって、
これまた偶然にも班が一緒になって席が隣りになったのは。
ココナッツちゃんはマロンくんのことを『かわいい坊や』のように思っていました。だから、よくからかうのです。
「マロンくんって変だよねぇ」って。うす笑いを浮かべて、上から見下ろすようにして。
マロンくんはココナッツちゃんのことを、ココナッツちゃんのことをどう思ってたんでしょうか?
きっとココナッツちゃんの『女』らしさと『男』の子のような振る舞いに圧倒されてたってことは確かですね。
だって、マロンくんが何か言い返そうとしてもココナッツちゃんは笑ってばかりで全然勝負になりません。
いつもいつも「ねぇ、マロンくんってさぁ」と質問攻めにします。そして、最後にはいつも「マロンくんって変だよねぇ」
と言って嬉しそうにしているのです。
ココナッツちゃんはマロンくんがかわいくてかわいくてしょうがなかったのです。
でも、こんなことがありました。それは、理科の時間のことです。ココナッツちゃんがバッタを触れなくて、
わぁわぁと声に出してしまっていると、いつもは『おねぇさん』のつもりでもマロンくんに「ほらっ、大丈夫だよ」と
助けてもらいました。ココナッツちゃんはぼんやりとマロンくんに捕まえられたバッタを眺めてましたが、
「マロンくんて、実は『男』の子なんだなぁ」と見直しました。
そして、一緒になって、ふざけっこをしちゃいました。それでもやっぱり、ココナッツちゃんはバッタを怖がっていました。
マロンくんはここぞとばかりにココナッツちゃんをいじめます。ココナッツちゃんは、わぁきゃぁわぁきゃぁ言ってましたが、
二人とも何だかとっても楽しそうです。
その叫び声はいつまでもいつまでもやみませんでした。もうとっくの昔にバッタさんは野原を跳び回っているというのに。
こうして二人は、いつの頃か、知らず知らずのうちに、とっても仲良しになりました。
しかし、そのことを不満に思う人もおました。それは田原くんです。
田原くんは、実を言うと、ココナッツちゃんの彼氏です。ココナッツちゃんには彼氏がいたんです。ただ、彼氏といっても
ココナッツちゃんがマロンくんと仲良くなっていた頃には、ココナッツちゃんは田原くんとどうなろうと、それには関係なくマ
ロンくんとはマロンくんとの関係として、全く別の問題だと考えていました。要するに、マロンくんとは仲よしのままでいた
いと思っていたのです。でも、それならそれで田原くんには田原くんの考えもありますから、結局、この三人は三角関
係になってしまったのです。
このトライアングルをマロンくんはいけないことだと思ってました。でも、ココナッツちゃんとは今まで通りの仲よしでいたか
ったし、それ以上に、もっともっと仲よくなりたっかたのです。正直を言えば、ココナッツちゃんと深い関係になりたいと
強く思ってました。もちろんそんなことは口には出せませんでしたが、こころのなかでは切望さえしていました。そして誰
かにそのことをうちあけたいと思っていました。そうして、少しでも楽になりたいほどに苦しんでいました。
マロンくんが、この『深い関係』を、このことを望んだのは生まれて初めてのことでした。マロンくんにとってココナッツちゃん
はそれほどまでに大きな存在となってしまっていたのです。しかし、生まれて初めて自ら望んだ、この思ひはトライアングル
の下での複雑な状況に置かれてしまったのでした。
さらに困ったことには、マロンくんは田原くんとそれほどではありませんでしたが、友達でした。だから、田原くんはマロンくんに
言うのです。
「おい、マロン、どういうつもりなんだ!おれだってココナッツちゃんとあんなに仲よくしたことないのにどういうつもりなんだ!」と。
どういうことかと言えば、マロンくんとココナッツちゃんが隣りに席を並べて、仲よくしているというよりは、『いちゃついている』
のを目にして、クラスの違う田原くんは廊下からのぞいてたんで、やきもちをやいていたんです。しっとして、絶対ゆるさないぞ!
というくらいの腹立たしさだったのです。
ですから、逆に言えば、それだけマロンくんとココナッツちゃんは、もう二人の世界を作っていたのです。どんなふうにかと言えば、
それはもう本当に二人だけの世界でした。
とにかくマロンくんは隣りにココナッツちゃんがいるというだけで、授業中もそわそわしています。いいえ、授業中だからこそ落ち
ついていられないのです。だって、こんなにそばに、生まれて初めて大好きになったココナッツちゃんがいるからです。気が気で
なんかはいられません。ココナッツちゃんと、ココナッツちゃんと・・・。気がつけば、いつのまにか、チラチラと横目を使って、マロン
くんはココナッツちゃんのことばかりを考えています。それで、見とれてしまってボーっとしちゃいます。そんな時、息苦しくても、
切なくても、もうマロンくんは、その味を覚えてしまいました。苦しければ苦しいほど、切ない気持ちにまろやかな甘みがあり、
そんな気分に酔ひしれてしまうということを。
ただ、こんな大切なものを相手に告げることなく、自分のこころの中にだけしまっておくということが、あとから、どれだけ辛い
ものとなるのか!ということまで、マロンくんには知るよしもありませんでした。
それでも、今のマロンくんはそんな気分を味わえるだけで、胸がいっぱいになっちゃうのでした。そして、この気持ちを誰にも
知られないようにと、だいじにだいじに、とってもだいじにしていました。
ココナッツちゃんは、そんなマロンくんの気持ちにはちっとも気がつきませんでした。ただ、昨日も今日も、毎日々々マロンくん
はいねむりをしていると思っていたココナッツちゃんは『マロンくん、毎日お勉強で夜おそくまで大変だね』と、あたたかな目で
マロンくんを見ていました。
それで、ココナッツちゃんの方ではマロンくんとお話しがしたくても、話しかけるのにも、実は、とても気を使っていました。なに
げなくをよそおい、それとなくを演じ、いつにまにかのふりをしていました。そんな気くばりがありました。このぉー、このぉー、
ココナッツ。だってココナッツちゃんにとってマロンくんは、マロンくんは・・・。
だからこそ、いざ、二人がおしゃべりを始めたら、始めだしたら、始まったら、マロンくんだってココナッツちゃんだって、嬉しいの
嬉しくないの!楽しいの楽しくないの!だってだってだって!
ココナッツちゃんは素直ではありません。マロンくんは恥ずかしがりやさんです。
それでも、まわりのみんなが見ていて、もういいかげんにしてよねぇ、と目をそむけたくなるくらいに『いちゃつく』のです。」本当に
二人は仲よしです。
そんな二人を見ていて、ある時には、田原くんとは大の親友で、同じクラスの古沢くんが、ココナッツちゃんのところにものすごい
勢いで走ってきて、ココナッツちゃんの前で立ちどまり、ココナッツちゃんをこわい目でにらみつけて、机を両手でバン!と、その
振動で机が跳ねあがるくらいにたたきつけたことがありました。隣にすわっているマロンくんは何が起こったのかと、びっくりしてしまい、
訳も分からないままポカンとしてしまいました。びっくりしたのはココナッツちゃんも一緒でした。そして、マロンくんと同じように不思議
そうな顔をしていました。
すると古沢くんはココナッツちゃんにどなりつけました。
「おい、ココナッツ! お前そんなにマロンのことが好きなのか!」
と。
それを言われてココナッツちゃんは下を向いてしまいました。そして、つやのある、ココナッツちゃんの浅黒のはだをした面には、ほん
のりと赤味がおびていました。そのうす赤く染まったココナッツちゃんを見て、マロンくんは、きれいだなぁ、と、見とれてしまいました。
その時、ココナッツちゃんはパチパチとまばたきをしていました。それを見て、マロンくんは、えっ? まさか まさか! ココナッツちゃんは
僕のことを、僕のことを・・・。 えっ? うそだよね。うそだよね! えっ? ほんとなの? と。
そんな二人の様子を見て、古沢くんがはきすてるように言いました。
「これで分かったよ。ココナッツ。お前マジでマロンのことが好きなんだろ。なぁ、そうなんだろ。おい!」
その言葉をうつむきながら、だまって言われるままにしていたココナッツちゃんは、だんだんとまばたきをするのがはやくなり、少しずつ体を
ちぢこませていきました。でも、最後に「おい!」って古沢くんがどなると、ピクンと身をふるわせて揺れ、ドッキリコンとして、まばたきは
パチクリパチクリ、パッチリコンとしていました。もう顔はまっ赤です。その姿を見ていて、マロンくんはココナッツちゃんがかわいそうになり、
怒って古沢くんをにらみつけました。古沢くんは、
「おい、マロン。どうせお前もココナッツのことが好きなんだろ」
と言って笑いだしました。もぉう、がまんができなくて、マロンくんが立ちあがろうとした時には、まだヘラヘラとバカにするようにしていた古沢に
ココナッツちゃんが、
「もう、やめてぇ!」
と、いすから腰を浮かして古沢の腕から流れおちていくようにつかまりました。
しばらくすると、さっきまでの大さわぎがうそのように、教室の中は平和です。マロンくんとココナッツちゃんもお互いに、はにかみながら隣りを
向いて、てれながら話しかけあい、お互いに。かわりばんこみたいにして・・・。そのうちに恥ずかしさを秘めながらも、それでも、なにげなく、
なにげなく、と。マロンくんとココナッツちゃんは・・・。