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その後のマロンくんとリボンちゃん
その一、そして、ふたりはどうなった?
マロンくんとリボンちゃんは実に長い間、森の中でさまよい、離れ離れになってしまったのですが、ふたりは淋しくて苦しくて胸の痛む思いから救われました。偶然の再会でしたが、互いに互いの胸の内を伝えることができたからです。
「もぉしかして、相変わらず、元気?」
「うん、相変わらず!」
全く何とも例えようのない、この言葉の交換こそ、マロンくんの悩み苦しみさまよった末の実りです。そして、マロンくんを探して探して、やっと見つけることのできたリボンちゃんが愛情をそそいで咲いた満開の花に他なりません。
これで全てはうまくいくはずでした。しかし、ふたりの気持ちが通じ合い、お互いの心がそれと知れた時、すでにマロンくんにはとっても大切なひとがいました。それは森の泉に小舟を浮かべる奇麗な女の人でした。マロンくんは、そのおねぇさんがどれだけ自分のことを思ってくれているのかを確かに感じていました。弱り切ったマロンくんをここまで元気にしてくれたのはリボンちゃんなのではなく、その奇麗な女の人でした。ですから、マロンくんとリボンちゃんの劇的な再会はその場限りの花火のようなものでした。その光は永遠であっても、その輝きにまさるものがなくても、ふたりは一瞬にして咲いて散る、最大の歓喜と、この世の中で一番の悲しみを同時に味わうことになってしまったのです。 ただし、それを知ってしまっているのは、世界中でマロンくんただ一人です。
リボンちゃんは、『くりくりぃ〜、早く早くぅ、なんとかしてぇ! もうこんなに辛い思いをするのはごめん。ねぇ、くぅりぃくぅりぃー』とでも口走ってしまいそうなほどに、『ねぇねぇねぇねぇねぇねぇ』と、ジタバタしたくなるくらいにあせっていました。でも、リボンちゃんには期待がありました。とっても大きな、夢にまでえがいた世界の始まりを心待ちにしていました。そして、その夢がかなうのを祈ってました。信じていました。
そのことはマロンくんにも十分に伝わっていました。でも、今のマロンくんにはリボンちゃんと離れ離れになっている間に秘密ができてしまっていました。ちょっと前までにはマロンくんのことでリボンちゃんの知らないことはありませんでした。リボンちゃんにはマロンくんのことならなんでも手にとるように見ぬくことができました。しかし、こんなに苦しみあせっているリボンちゃんにはマロンくんの変化が読みとれません。リボンちゃんは涙をこらえて、涙は喜びの涙にするためにこらえているのです。さぁ、マロンくん!男の子だったらリボンちゃんを抱きしめてあげなさい。好きだよ、大好きだよ、と、ほおずりをしてあげなさい。そして、リボンちゃんに甘えるのです。さぁ、マロンくん!
だめだよ、マロンくん。君にはもうあんなに立派な女性がいるんじゃないか。あのひとは君のことをいつまでもいつまでも大切にしてくれるよ。それに、マロンくん、君がここまで立ち直れたのはあのひとのおかげなんだよ。リボンちゃんは君に辛い思いをさせただけじゃないか! しかも、リボンちゃんは君のことが好きだったとはいえ、君の気持ちを知りながら、君をもて遊んでいたともいえるんじゃないかなぁ。マロンくん、道をはずすような生き方はいけないよ。そうだろ、マロンくん。
マロンくんの心の動きは両極端に広がっていくばかりで、マロンくんはいつの間にか下を向いてばかりいるようになりました。
すると、リボンちゃんはマロンくんの中に入って来るように、その小さな体で近寄って来ました。しかも、リボンちゃんは下に向けられたマロンくんの視線に自分の目を合わせるように、じっとマロンくんを見つめています。これがリボンちゃんの優しさです。これがリボンちゃんのかわいいところです。そして、これがリボンちゃんの愛情表現であり、背の小さなリボンちゃんの方が、こんな風に上を向いてマロンくんを見上げている時こそ、リボンちゃんがマロンくんに心をゆるしている証拠なのであり、その、訴え! なのでもありましょう。
しかし、リボンちゃんの顔がそのままマロンくんの胸にぶつかってしまいそうになった時、リボンちゃんはマロンくんの不自然に気付きました。そして、何気のない言葉を口にして、マロンくんの様子をうかがいます。こんな時でさえ、リボンちゃんにはマロンくんを気使う心配りがあります。
マロンくんはこらえていた涙があふれてしまいそうになりました。そして、それがばれないようにと首をぐるりと回転させながら、その場から走りさってしまいました。逃げてしまいました。
マロンくんのバカ野郎! マロンくんのバカ野郎! マロンくんのバカ野郎!
逃げるくらいなら、いっそのこと、泣いてしまえ! 泣いちゃえばいいのにぃー
リボンちゃんはその場でとり残されてしまいました。そして、本をいっぱい買って、おうちに帰りました。
その二、悲哀
マロンくんはリボンちゃんとの再会で気付いた事の重みにどうすることもできず、ただぐったりと寝ころんでばかりという始末でした。他にすることといったら、泉をぐるりとぶらぶら歩き回ることくらいで、そんな時でさえも途方に暮れていました。
マロンくんはリボンちゃんが好きで好きで大好きで苦しみ、苦しんで苦しんで、知らず知らずのうちにふたりは道に迷って、森の中の迷路にはまってしまったのですが、これは恋の迷路だったのです。そして、再会した時、もうマロンくんは何が何だか自分の気持ちでさえもよくは分からなくなってしまっていたのです。確かにリボンちゃんのことは今でも好きだけど、泉のおねぇさんのことを考えると、マロンくんは息苦しく切なくなる一方でした。
「ねぇ、マロンくん。女の子の方から一緒にスキーに行こうって誘われたら、どうする?」「一緒に? ってどういうことですか?」
「だから、二人で、ってことよ」
「ぇえ……」
「それがどういう意味になるか分かる?」
「? 分かりません」
「だから、それは全部OKってことよ」
「……
「ねぇ、マロンくん、二人でスキーに行かない?」
「えっ!」
「あたしを、誘って」
「ねぇ、女の子の方から手の平にのっかってきているのに、それをにぎらない男の子なんていないのよ」
「そうなんですかぁ」
「そうに決まってるでしょ」
もう随分前から、おねぇさんはマロンくんを『男』として見ていました。当然、からだの関係も積極的に望んでいます。
マロンくんは必死になって、それから逃れようとしていましたが、そろそろそれにこらえるのにも限界に達していました。今度、逢う時は自分の方から、とまで決心がかたまり、でも、どうすればよいのか分からず、だんだんとおねぇさんの方もいらだたしく思い始めるようになり、そんな時にリボンちゃんとの再会があったのです。
さぁ、マロンくん、どうしますか? |
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